接合および組立

イーストマンTritan™コポリエステル製パーツの組立には幅広い接合技術が利用できますが、 組立方法の選択には、製品の最終用途に関する要件が密接に関連 します。イーストマンは、製品開発、3-Dモデリング、技術サービスなど、様々なサービスの提供を通じて、各製品に適した加工方法の選択を支援しています。

接着剤、超音波溶着、レーザー溶着といった方法は、Tritanから作られたコンポーネントの接合に効果的であることが分かっています。またスナップフイットや機械式ファスナーも、組立に用いることができます。

Tritan製パーツの接合方法には以下のようなものがあります:

  • 化学的方法
    • 接着剤による接着
  • 機械的方法
    • ネジ
    • インサート
    • スナップフィットジョイント
  • 加熱式接合
    • 超音波溶着
    • レーザー溶着
    • スピンモールディング
    • 熱板溶着

接着剤

プラスチック材料接合用には、多種多様な接着剤が市販されています。そのため、一般論を述べるのは 困難です。蒸発してしまう溶剤とは違い、接着剤層は組立後のパーツの機能部分として残ります。従って、完成した成形品の性能や外観が異なってくる場合があります。イーストマンTritan™コポリエス テル同士の接着に優れた性能を示す市販接着剤のう ち、主要なものとしてWeld-On® 55、Lord® 7542 Adhesives A/B(主に接着剤層の特性によります)、Flex Welder™ 14345などがあります。接着剤の選択にあたっては、次のような特性を考慮する必要があります:

  • 接合するパーツとの化学的適合性
  • 組立後の接合部の外観の美しさ
  • 温度変化に伴う膨張 / 収縮
  • 脆性、剛性、柔軟性
  • 耐久性 / 耐用性
  • 接着強度(プラスチックとの接着力)
  • 結合強度(引裂き強さ)
  • 最終用途の要件
注: 膨張・収縮が大きな問題となる場合は、機械式ファスナーの使用を検討してください。

接着剤による接着手順
接着剤を用いて接合するTritan製パーツの表面同士は、力を加えなくてもぴったりと合い、目に見える隙間がないようにしま す。接合する表面は滑らかでなければなりませんが、ツルツルに磨き上げてはいけません。120 グリットまたはより粒度の細かいサンドペーパーで、接合する表面を磨きます。ダイヤモンドホイール(砥石)、ジョインター/プレーナーなどの機械装置を使用しても、良好な結果が得られます。しかし、ソフトポリッシングホイールやフレームポリッシング(火炎研磨)は、角が丸くなって隙間ができたり、うまく合わなくなったりする場合があるためお勧めしません。

下記の市販接着剤は、Tritan同士の接着に優れた性能を示す接着剤のうち、主要なものです。
  • Weld-On® 55
  • Lord® 7542 A/B
  • Flex Welder™ 14345
  • Lord 403/19
  • Lord 406/19
  • Lord 406/17
  • Plastic Welder® II 14340
接着剤の性能評価は ASTM D1002 に従って実施しました。

上記は、使用に適した全ての接着剤をリストアップしたものではありません。社内試験で評価を実施した中で、Tritanへの使用が推奨される接着剤をあげています。最高の性能を実現するためには、接着剤メーカーより提供される使用ガイドラインに従ってください。接着剤を選択する前にパーツの用途を慎重に評価し、十分な性能(接合部の外観および強度)と該当する規制要件とを満たす接着剤を選択するようにしてください。

揮発性成分を含んだ一部の接着剤は、硬化時に収縮します。接着剤の収縮を補うためには、接合部を斜めにカットし、接着剤を幾分余分に入れることができるような余裕を持たせます。収縮に関する具体的な情報については、接着剤のサプライヤーの資料をご覧ください。

接着剤を用いたTritanの接着についてのより詳しい情報や、他の材料との接着についてのお問い合わせは、お近くのイース卜マンの技術担当者にご連絡ください。

超音波溶着

超音波溶着は、プラスチックを接着剤や溶剤、機械式ファスナーを使用せずに接合する場合に、よく用いられる方法です。超音波溶着装置は、動作原理として、電気エネルギーを機械的振動エネルギーに変換します。振動エネルギーは、特別設計のホーンを通じ てプラスチックパーツに伝達されます。ホーンは、エネルギーを伝達するだけでなく、溶着されるパーツに圧力を付加する役目も果し、溶着時のアラインメ ント(位置決め)に役立ちます。溶着機が作り出した高周波振動によって発生する摩擦熱がプラスチックを軟化させ、プラスチックパーツが接点で接合します。加熱されたプラスチック材料が接合部分に流れ込んだ後も、溶着ホーンは引き続き一定の圧力を付加し、材料が固化するまでの間、パーツが動かないように固定し続けます。

他の接合方法と比較して、超音波溶着には以下のようないくつかの利点があります。

  • 化学物質を使用せず、環境的に安全
  • 接合部が美しい
  • 製品の均一性に優れている
  • 高速に接合し生産性が高い
  • 統計的工程管理に適したコンピュータ制御プロセス
超音波溶着プロセスの最適化を図るためには、3 つの主要要因、すなわち材料特性、パーツおよび接合部のデザイン、製品の使用品質要件について検討する必要があります。
  • 材料特性は、ホーンの接触面から接合部への振動エネルギーの伝達に影響を与えます。そのため、材料を変更した場合は、デザインや工程の再評価を行なう必要があります。
  • パーツおよび接合部のデザインは、組立後の最終パーツの材料性能を決定する上で非常に重要です。材料特性と同様に、パーツデザインは、溶着部分へのエネルギー伝達効率に影響を及ぼします。接合部のデザインは、それによって接合部に圧力が集中し、適切な溶融量が供給されると同時に溶着プロセス時の成形品のアラインメントが行われることから、溶着の質を決める手段となります。
  • 使用品質要件によって、パーツに使用するべき接合部のタイプの選択は変わってきますので、これらを十分に検討する必要があります。接合部にかかる負荷、気密シールの必要性、接合部の外観、フラッシュ(ばり)の許容度などの要因を考慮し、接合部のデザインを選択します。
大部分の非晶性プラスチックは、適切な溶着パラメータを設定しさえすれば、超音波溶着を用いて強力に接合できます。溶着強度や外観に著しい影響を与えるパラメータとしては、振動数や振幅、付加する圧力、負荷、時間、接合部のデザインなどが挙げられます。さらに考慮すべき事項として、溶着装置の運転モードがあります。運転モードによって、溶着の品質(完全性)に影響が及ぶ場合があるためです。制御方法としては、溶着時間、崩壊距離、溶着エネルギーなどがあります。

以下のセクションに、イーストマンTritan™コポリエステルを使用する場合に優れた性能を示す接合部のデザインについて、一般的なガイドラインを示します。超音波溶着は、数多くの要因が関与する複雑なプロセスで、製品ごとに独自の課題が複数あります。そのため、パーツの設計者や技術者の方々におかれましては、お近くのイーストマンの技術担当者にご連絡頂き、各製品の詳細や仕様について是非ご相談頂きますようお願いします。 

シェアジョイントのデザイン

エネルギーダイレクターによる接合部のデザインとは対照的に、シェアジョイン卜を使用すると、深さを変更することにより溶着面積を容易に変えることができるため、強靭性や耐久性を向上させることができま す。シェアジョイントのデザインにより、接合するパーツ間のインターフェアランスフィット(締まりばめ)を行うことができます。インターフェアランスは通常、0.008 in.~0.012 in. (0.2~0.3 mm)の範囲です。シェアジョイントは、片面、ニ面の両方が可能です。振動溶着機のホーンがパーツ同士を圧着すると、インターフェアランス部分の材料が軟化し、接触面を接合します。

イーストマンTritan™コポリエステルの超音波溶着は、接合部を適切にデザインするとともに、適切な接合パラメータを使用すれば、うまく行うことができます。パーツ設計者は、慎重に最適性能と実用性を兼 ね備えたジョイントのデザインを選択し、機能パーツの最終用途の要件を満たさなければなりません。設計者は、溶着装置のサプライヤーまたはイーストマンの技術担当者と相談の上、製品開発の段階におい て、実際の使用条件に即した厳格な最終用途試験を実施する必要があります。下記は、装置のサプライヤーのリストです。

ブランソン・ウルトラソニックス・コーポレーション (Branson Ultrasonics Corporation)
41 Eagle Road
Danbury, CT 06813-1961 U.S.A.
電話:(1) 203-796-0400

デュケイン・インテリジェント・アセンブリー・ソリューションズ (Dukane Intelligent Assembly Solutions)
2900 Dukane Drive
St. Charles, IL 60174 U.S.A.
電話:(1) 630-797-4900

ハーマン・ウルトラソニックス・インコーポレイティド (Hermann Ultrasonics Incorporated)
1261 Hardt Circle
Bartlett, IL 60103 U.S.A.
電話:(1) 630-626-1626

レーザー溶着

透過レーザー溶着では、近赤外レーザーエネルギー(波長800~1100 nm)を利用してレーザー光吸収添加剤を励起し、接合部表面に熱を発生させます。その際、軟化または溶融した熱可塑性プラスチックに外部から締め付け力を付加すれば、接触している二つの表面が溶着されます。ジェンテックス・コーポレーショ ン(Gentex Corporation)によるClearweld® (クリアウェルド)など、溶着プロセスの開発によって、レーザー溶着の利用範囲が広がり透明な製品にも適用できるようになりました。このプロセスでは近赤外線を吸収するClearweld液を接合部の接触面に塗布します。もしくは、組み合わせる下側の基材にClearweld添加剤を混ぜ入れます。レーザーを照射するとClearweld材がエネルギーを吸収し、熱が発生して溶着されます。



レーザー溶着プロセスの長所としては、以下のような点があげられます。

  • イーストマンTritan™コポリエステルを使用した場合、非常に優れた結合強度が得られる
  • 溶着された接合部の仕上がりが非常に美しい
  • 溶着中にフラッシュ(ばり)や微粒子が生じない
  • 溶着サイクル時間が非常に短い
  • 硬化時間をかける必要がない
Tritanのレーザー溶着については、単純なラップシェアジョイントを用い、引張荷重を付加して試験を行って評価しました。形成された溶着は、仕上がりが非常に美しくほぼ無色で透明性が保たれます。引張試験の結果、溶着破損例は全て基材において破損しており、溶着強度に優れていることが示されました。

Tritanにおけるレーザー溶着の利用ならびにClearweld技術についての詳細は、イーストマンの技術担当者にお問い合わせください。

装飾加工

装飾加工技術を利用することにより、パーツ設計者は、イーストマンTritan™コポリエステル製パーツに機能性や見た目に美しい要素を加えることができます。Tritanには、塗装、オーバーモールド、印刷、デカールやラベルの使用をはじめ、他にも数多くの装飾加工技術が利用できます。

塗装

特別な装飾効果を施したり、プラスチック表面の機能性向上を図ったりするために、塗装が必要になる場合があります。塗装を行う理由として、以下のようなものがあげられます。
  • 耐薬品性、耐摩耗性または耐候性の向上
  • 隣り合うパーツやコンポーネントとのカラーマッチング
  • 木目調の外観や、発光素材、金属フレークなどを用いた装飾
  • 導電性
  • 超高光沢またはマット仕上げ
  • 模様のある外観(モールド成形による模様付けが不可能な場合)
一般的に使用される塗料には、二つの基本的なタイ プがあります。一つはラッカータイプで、溶剤の蒸発により完全に乾燥します。もう一つは硬化型塗料またはエナメル塗料で、性能特性を得るためには、通常、焼付が必要になります。どちらのタイプの塗料(ラッカー、エナメル)も、それぞれ一定の長所と短所があります。最適な結果を得るためには、メーカーのガイドラインに従ってください。

下記は主要な塗料サプライヤーのリストです。

レッド・スポット・ペイント・アンド・バニッシュ・カンパニー (Red Spot Paint & Varnish Company) (www.redspot.com)
シャーウィン・ウィリアムズ・カンパニー(Sherwin-Williams Company) (www.sherwin-williams.com)
日本ペイント株式会社 (Nippon Paint Company) (www.nbcoatings.com)
イースタン・ケムラック・コーポレーション(Eastern Chem-Lac Corporation) (www.randolphproducts.com)

オーバーモールド

硬質熱可塑性プラスチック製の製品に機能的要素や装飾的要素を付加するために、ソフトタッチの材料をオーバーモールドすることがよくあります。イーストマンTritan™コポリエステルは、市販されている各種グレードの熱可塑性エラストマー(TPE) に対して優れた接着性を示します。使用する TPE グレードの選択に当たっては、TPE サプライヤーまたはイーストマンと協力し、コポリエステル基材との組み合わせに適切なグレードを選ぶことが非常に重要です。

成形品デザイン時の注意点
  • パーツの厚さと TPE の厚さを最適化し、接着および寸法の安定性を図ります。TPEの厚さがTritan製パーツの厚さよりも厚いと、金型から外したときに反りが生じる場合があります。経験から、基材の厚さを TPE の厚さの 2 倍とすることが一般的に推奨されます。
  • 機械的インターロックを組み込むと、TPE の接着力を向上させるとともに、パーツの耐久性を高めることができます。機械的インターロックは、TPE 層が薄 い場合や使用品質要件が非常に厳しい場合に特に重要となります。
  • 複数の表面にソフトタッチ特性を取り入れたデザインの場合、フロースルー (flow-through) デザインを用い、接着力と耐久性を向上させる必要があります。
  • 剥離の可能性を最小化するため、TPEエッジを硬質基材のオーバーモールドされていない部分の高さとぴったり合わせるか、それ以下となるようにする必要があります。
パーツデザインおよび具体的な加工方法について、より詳しくは、関連の資料をお取引先の PEサプライヤーより入手し、ご参照ください。

適切な TPE グレードを選択するに当たっては、オーバーモールドされた製品の最終使用環境を考慮することが重要です。それぞれの用途に応じて、特有の使用品質基準を考慮する必要があリます。

印刷

印刷は、イーストマンTritan™コポリエステル製パーツに デザインを施したり、文字やその他のマークを付けたりする際に用いられる一般的な方法です。従来のコポリエステルと同様、Tritan製パーツも簡単に印刷ができます。火炎処理やコロナ処理などの二次加工を行なってインクの付着力を強化する必要がある材料とは異なり、Tritanは、成形されたままの状態で十分に印刷することができます。Tritanへの印刷には、数多くの印刷方法が用いられています。適切なイ ンクを使用すれば、高品質のグラフィックスが印刷されたパーツを生産することができ、ライフサイクル試験においても優れた耐久性が実証されています。

イーストマンは以下のインクサプライヤーに依頼して、 印刷加工におけるTritanの性能評価を行っています。

ナズダー (Nazdar)
8501 Hedge Lane Terrace
Shawnee, KS 66227-3290 U.S.A.
電話:(1) 913-422-1888

サン・ケミカル (Sun Chemical)
35 Waterview Boulevard
Parsippany, NJ 07054-1285 U.S.A.
電話:(1) 973-404-6000

イーストマンTritan™コポリエステルの塗装に関するご相談は、イーストマンの技術担当者が承っています。

ラベルおよびデカール

粘着ラベルやデカールは、ロゴやモデル識別記号、装飾用グラフイックスなどのグラフィックスを施す簡単な方法です。多種多様な色や形のラベルやデカール が市販されており、 一時的なもの(製品の使用期間のある時点で簡単に取り外せるように考案されたもの)と恒久的なもの(パーツの使用期間全体にわたって貼付したままで使用できるように、耐久性に優れ、見た目の美しさを保てるように考案されたもの)のいずれかに分類されます。

ラベルやデカールの選択に当たって考慮すべき重要な基準としては、以下のような点があげられます。
  • 一時的な装飾か、それとも恒久的な装飾か。
  • ラベルは、透明、半透明、不透明のいずれか。
上記二つの基準は、特定の製品に使用されるラベルの選択において、非常に重要な役割を果たします。特定の製品に適したラベルを選択するには、イーストマンの技術担当者、またはお取引先のラベルサプライヤーと協力することが重要です。
以下に、イーストマンTritan™コポリエステルに貼付して使用するラベルの種類に関する一般的な推奨条件を示します。
  • 一時的、または、取り外し可能なラベルの場合には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレ ン、ニ軸延伸ポリプロピレン(BOPP)のフィルムが裏貼りされているラベルを使用してください。
以下に、Tritanへの使用を避けるべきラベルおよびデカールの種類に関する注意事項について、一般的なコメントを示します。
  • 一時的な、または取り外し可能なラベルには、可塑化ポリ塩化ビニル (PVC) 製ラベルは避けてください。はがす際に問題が生じる可能性があります。

よくあるご質問について

イーストマンTritan™コポリエステル製パーツの接合と組立には、どのような方法を用いることができますか?
化学的接合 - 接着剤による接合
機械的接合 - ネジ、インサート、スナップフィット接合
熱接合 - 超音波溶着、スピン溶着、レーザー溶着、熱板溶着

超音波溶着を使用する場合の最適な接合方法は?
片側シェアジョイントと両面シェアジョイントは、シンプルなエネルギーダイレクターとの組み合わせで最適な結果を得られます。

Tritanを装飾することはできますか?
はい。塗装、オーバーモールド成形、印刷、ラベルとデカールにおいて良好な結果が得られます。

どのようなインクで Tritanにプリントできますか?
イーストマンは、Nazdar 社、Sun Chemical 社と共に Tritanに使用するのに最適なインクの配合を用意しました。

Tritanは接着剤接着に向いていますか?
はい。Weld-On® 55、Plastic Welder® II 14340、Flex Welder™ 14345、Lord® Adhesives 7542 A/B、403/19、406/19、406/17などが使用できます。

その他の関連リソース