金型デザイン

製品パフォーマンスと同様、適切な成形品デザインによって成形性も向上します。成形性を高めるデザインは次のような特性を備えています:

  • 適正な流動長をもつ
  • ウェルドラインが正しい位置に設定されている
  • 適度の射出圧力
  • 型締め力の最小化
  • 不良率の最小化
  • 部品組み立てが簡単
  • ゲート除去や塗装、ドリル加工などの二次加工が不要(または最小限)
また、良いデザインで最小限に抑えられるものとして次のようなものがあります:
  • 残留応力
  • フラッシュ
  • シンクマーク(ヒケ)
  • 表面欠陥
  • 品質と生産性を損ねるその他多くの一般的な成形不良
金型への充填が適切な圧力で行われるかどうかは成形品の肉厚に大きく左右されます。適切な肉厚の決定には、スパイラルフローデータが有効です。成形品重量、型締め力、ウェルドライン位置のバランスが最善になるよう、ゲート位置と肉厚を設定します。

冷却

適切に冷却が行われるよう成形品をデザインすることでサイクル時間が短縮され、コストを削減しながら、質の高い部品の成形が可能になります。

十分な冷却は、イーストマンポリマーを使用する金型デザインの際、決して欠かすことはできません。

冷却が不十分であると次のような結果が生じます:

  • サイクル時間の増加
  • 冷却が成形品全体または場所によって不均一
  • 高レベルの残留応力
  • 反りの増大
  • 型離れの悪化
以上の項目はすべて深刻な問題になる可能性がありますが、中でも取り出し時の型離れの悪化はイーストマンポリマーを使用する場合に最も起こりがちな問題です。

冷却に関する注意事項:
  • 冷却液の流れる速度を維持せずに冷却回路の直径を大きくすると、除去できる熱量が低下します。経験的相関では、乱流が続いている時に一定の流量 (gpm) を保ったままで直径を 2 倍に拡大すると、面積の拡大にもかかわらず、伝熱量が約 40% 低下するという結果が示されています。
     
  • 乱流の場合、理論上では冷却管の直径を拡大しながら冷却液の速度を維持することで、回路内の熱伝導性が大幅に高まるとされています。これに従うと、例えば、直径が 2 倍になると伝熱量は約 80% 増加します。

スプルーデザイン

成形がうまく行われ、成形品を楽に金型から取り出せるようにするためには、スプルーの適切なデザインが重要です。イーストマンポリマーにとってスプルーデザインが重要な理由として次のようなものがあげられます:

  • 高温のポリエステル樹脂は工具鋼に付着しやすい。
  • スプルーは非常に分厚く、高温時の冷却が極めて困難。
伝導性の高いスプルーブッシュ
イーストマンのお客様の多くは、伝導性の高いスプルーブッシュを有効に利用しています。ブッシュは熱伝導に優れた銅合金でできています。ノズルの熱を遮断して耐磨耗性を高めるため、硬化 420 ステンレススチールでできたノズルシートが組み込まれています。これがスプルーへの付着を抑え、取り出し時のスプルー硬度を高め、サイクル時間を短縮します。このスプルーブッシュには、標準のスプルーテーパー 42 mm/m (0.5 インチ/フット) を適用することで良好な伝熱が得られます。

ランナーデザイン

ランナーのデザインには、多くのエンジニアリングポリマーに使用されるガイドラインと同じものを適用できます。ランナーは、スムーズでバランスのとれたフローを提供できるようデザインされなければなりません。円形ランナーは、樹脂のフローの問題や、せん断を低減します。コールドスラグウェルは、フロー先端で生じる冷えた樹脂の塊を溜めておく部分として便利です。ランナーはベントを十分に行ってください。

ゲートデザイン
イーストマンのポリマーの成形には、従来のゲートデザイン(下記)を使用することができます:

  • スプルーゲート(ダイレクトゲート)
  • ファンゲート
  • トンネルゲート(サブマリンゲート)
  • フラッシュゲート
  • エッジゲート(タブゲート / ファンゲート様式)
  • ホットランナーシステム
完成した成形品のサイズと外観を考慮した上で、ゲートの種類と場所を選定してください。

ホットランナーシステム

デザインのガイドライン
ホットランナーシステムは、ポリエステル樹脂を使用するアプリケーションにおいて広く利用されています。ホットランナーは適切にデザインすることで、スプルーとランナーの粉砕を無くしたり、低圧での成形やサイクル時間の短縮などが加工条件の改善を可能にします。ホットランナーシステムの選定には、成形品の大きさ、ポリエステル構造、成形品デザインが大きく影響します。適切なランナーのデザインは、成形メーカー、エンドユーザー、金型メーカー、ホットランナーメーカー、そしてイーストマンが合同で話し合って選定することが極めて重要です。

均一な加熱と適切な温度制御
ゲートでの優れた温度制御、冷却をしっかり行うことはポリエステル原料の成形において非常に大切です。金型は、熱がゲートから素早く逃げるようデザインされていなければなりません。その点では、ホットランナーシステムがインサートとしてキャビティを突き抜けている場合よりも、ゲート開口部がキャビティ鋼材全体の一部となっている場合の方が望ましいデザインです。ゲートがキャビティ内にあると、冷却回路(直線または環状の水孔)はゲートエリア内のキャビティの冷却に組み入れて使用することができます。ホットランナーサプライヤーの中にはゲート冷却のインサートを用意している場合もあります。ゲートがしっかり冷却されなければ、垂れ落ちや付着、糸引きを起こしかねません。ホットドロップの一部として直接加熱された鋼材は、部品に直接触れてはならず、つまり冷却された金型の部分から断熱されなければならないということになります。

当社では、個々のフローに独立した冷却ループを配置すること、またホットドロップのゲート冷却に温度制御を設けることを推奨しています。温度制御の追加はデバッグの際に便利なほか、ゲートの外観とパフォーマンスの最適化にもつながります。

滞溜を避ける
プラスチックの流路は、スムーズで途切れのないものでなければなりません。隙間や空洞に原料が入り込むと劣化し、不良品の原因となってしまします。

せん断発熱を最小限に抑える
せん断発熱は、ゲートやその他の場所など流路が急に曲がる部分や端で起こります。せん断発熱を最小限に抑えられるよう、直径は十分に大きなものである必要があります。成形充填分析では、せん断発熱を表示し、デザインの段階で潜在的な問題を指摘することができます。

バルブゲート
イーストマンポリマーの射出成形を行う際は、可能な限りバルブシステムをご使用ください。これには、他のホットメルトデリバリーシステムにはない、いくつかの利点があります。バルブゲートは、溶融流路を外側から加熱し、ゲートを機械的に開閉遮断することで、ゲート残りの管理を可能にします。ゲートのサイズは、他のシステムと比べて大きいのが一般的です。充填プロセスの際はバルブピンがゲートを開閉し、樹脂の流れをスムーズにします。結果として、せん断発熱と圧力低下が抑えられます。

ベントおよび取り出し
ベントは、樹脂充填時に発生したガスを金型から逃がす役割をします。ベントが十分に行えていなければ、ショートショットや焼け、劣化の原因にもなります。これを防止するために次の点を守ることが大切です:
  • 適切な場所で十分なベントを行う。
  • ベント部分を定期的に点検し、清掃する。
  • 可能な場所にはベントにエジェクタピンを使用する。
  • メンテナンスに金型の解体を必要とする場所ではベントを避ける。
イーストマンポリマー向け金型におけるベントの典型例
イーストマンポリマー向けの金型における望ましいベントは、深さ0.0005〜0.001インチ(0.012〜0.025 mm)(小さな部品およびゲート付近のベント)、または0.001〜0.0015インチ(0.025〜0.038 mm)(大きな部品)となっています。ランド長さは一般的に0〜125インチ(0.250〜3.6 mm)で、金型からガスを抜くことができる大きな流路に開口します。

金型用合金
金型に使用する鋼材の選定を行う際は、次の内容が検討すべき項目としてあげられます:
  • 耐摩耗性
  • 強靱性
  • 機械加工性
  • 研磨性
  • 寸法安定性
ファミリーモールド
ファミリーモールドでは、金型に2種類以上の形状の違うキャビティがあります。イーストマンポリマーはファミリーモールドにおいても有効に利用されています。他のポリマーと同様、それぞれのキャビティへの充填のバランスを図る必要があります。全てのキャビティに満遍なく均等に充填されなければなりません。充填が不均衡であると、 過充填で高い応力が発生し、反りの原因となります。また、充填不足や完全に充填されない部分も出てきます。

金型研磨およびテクスチャー加工

金型研磨
イーストマンポリマーは、優れた光沢をもち、金型表面の仕上がりの影響を強く受けます。しかし、取り出しのために表面を必要以上に研磨することは、成形コストの上乗せにしかならならないことを忘れてはなりません。低い位置あるいは抜き勾配のない部分で真空箇所が発生している場合、過剰に研磨された表面によって離型が悪くなることがよくあります。一方、真空箇所がない場合は通常、表面の研磨で取り出しやすくなります。

金型表面のテクスチャー加工
テクスチャー加工はウェルドラインやフローマーク、ゲートブラッシュ、シンクマーク、スカッフィング(カジリ)を隠すのに有効です。何百という数の標準パターンがあり、 原則として、白黒で書き表せるものなら何でもテクスチャーパターンの原型として使用することができます。

抜き勾配のガイドライン
ほとんどの場合、片面1度が取り出し用の抜き勾配として推奨されています。しかし、リブやボス、その他のデザインの形状によっては片面 ½ 度を適用することで、それぞれの寸法特性に対応することもあります。リブとボスに関しては、構造上の強度を確保するため、上部の厚みに対する注意が必要です。

取り出しのための金型表面処理
時に、抜き勾配に小さな角度が求められることがあり、これに従うと金型が冷却に適さない寸法になってしまうことがあります。こういった場合には、部品の取り出しのための表面コーティングや表面処理を利用することができます。イーストマンは広範囲に及ぶ研究をこれまでに完了しており、どのコーティング、処理が当社のポリエステルの離型剤としてより有効であるかを検証してきました。推奨されるのはその上位 3 つです。

よくあるご質問について

ホットランナー方式の金型でコポリエステル樹脂を成形するのに適したゲートは何ですか?
バルブゲートです。

コポリエステル樹脂の射出成形金型に、コールドスプルーをゲート方法として使用することはできますか?
はい。コールドスプルーをゲートとして使用する際は、高熱伝導性のスプルーブッシュの使用をお勧めします。スプルーの長さを3インチ以内で維持してください 冷却ラインを近接させて配置してください。軽く圧入を行い、スプルーブッシュが金型に組み込まれていることを確認してください。

コポリエステル樹脂向けの射出成形金型について、デザイン上重要なポイントは何ですか?
冷却です。キャビティ表面の全てが十分に冷却されなければいけません。成形サイクル中にキャビティの表面温度が樹脂のガラス転移温度に近づくまたは超える場合、樹脂に粘着性が生じ、取り出しが難しくなります。

コポリエステル樹脂用射出成形金型の長いコアを冷却する際の一般的な方法とはどのようなものですか?
長いコアの効果的な冷却法としては、バブラー、バッフル、スパイラルなどの冷却回路が有効です。長いコアの端まで冷却水が届かない場合には、熱伝導性を高めるために高伝熱の合金の使用をご検討ください。

ゲートエリアの冷却はなぜ大切なのですか?
射出成形の充填プロセスの間、キャビティに入っていく熱はすべてゲートを通り、その結果ゲート付近には高い熱負荷がかかります。したがって、金型の製作ではこの部分の温度制御がしっかり行えるよう注意しなければなりません。それを可能にするのが冷却回路を近くに配置する方法と、ウォータージャケット付きゲートインサートを配置する方法です。通常はゲート冷却回路の給排水の配管を独立させ、ゲートエリアをキャビティ冷却と切り離して最適化できるようにすることが望まれます。

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